2024/10/21 18:02
日曜日
買い物から帰った娘が息せき切った様子で言いました。
「お母さん、買い物の帰りお不動さんを覗いてみたら、お祭りがあっているの。本当は来月の
七五三の前倒しもやっているみたいで、可愛いこどもさんが一杯。出店もたくさんありとても
賑やかよ。素晴らしいお天気だし、ちょっと行こうよ」。そこで即決。いつものように車椅子の
用意もできました。
境内に一歩入ると、もうわくわくするような雰囲気に包まれてしまいました。そうだった、夫
が元気だったころ、蚤の市がある日はいつも二人で出かけて、古い道具を楽しんだり店主さん
となんでもない品物の話が弾んだり、値引き交渉の腕を磨いたりしたものでした。あの頃に比
べると、出店も随分ふえたように思います。品物は量よりも質という感じで豪華なものが増え
た感じ。ざっくりと山のように積んであった古着類も、きれいに手入れされて畳まれています。
娘が一人分食事お膳を取り上げて珍しそうに眺めているのをみてちょっと意外でした。「これは
一人分ずつの食事用御膳だけど、畳の部屋がない我が家には不向きかな」。と言うと「そうね」
と諦めたようでした。
それにしても、そんなお膳には古く懐かしい思い出があります。父も母もなくなっていた私が、
「お正月に我が家でカルタ会をしたい」と我儘を言った時、祖母が10人分ほどの御膳を並べ
て、ご馳走で飾ってくれたことがありました。物のない時代でした。どんなご馳走だったか思
い出せませんが、おぜんざいだけはよく覚えています。みんなにとても喜ばれましたから。
祖父の後妻だった義祖母。血のつながらない孫の私をどんなに大切にしてくれたか。こんな
ことが思い出されて胸が熱くなります。お膳を知らないという娘と、珍しく時代の差も感じま
した。私たちは二人とも、新しい生活のために、断捨離をしました。こうして古い道具たちを
みると忸怩たる思いがあります。いつもはすぐに折角だから今日の思い出にと何か買い求めた
ことでしょう。でも今日は「手放したものたちに申しわけない」そんな思いになっていました。
何も買わないで帰りました。
広い境内をゆっくりと散策しました。手入れの行き届いた木々。見事に伸びたその力強い感触
は、こうして私たちの心をいたわり励ましてくれているのに違いありません。
七五三のよそおいで走り回る子どもたち。写真を撮りまくるお父さん。お母さんも和服姿が多
く。苦労の多い生活の中でもこうしてきちんとお祝いをするのだなあ。と久しぶりの風景に感
動してしまいました。思い出すことも少ない懐かしい思い出に一杯ふれました。忙しい中、こ
うして老いた母を折りおりに刺激に晒してくれる娘に感謝一杯です。とてもいい日曜日でした。
2024年10月21日