2024/10/14 16:01

造花のおはなし

一緒に暮らしている娘は、25年間サックス奏者として自分の教室をもち、お弟子さんたちを育ててきました。コロナ禍を機に、教室を閉じ、新しい仕事に励みながら、これからの新しい音楽のあり方を模索しているように見受けられます。先日お仲間のライブに招待出演した帰りのお土産に、可愛い花束を私に頂きました。「わざわざお母さまにと特約だったのよ」ということで嬉しく頂戴しました。

その花束は、薄いピンク色の薔薇1輪と、カスミソウのような小さい白い花の一枝。緑の小枝が添えてありました。それらはみんな造花でした。そして素晴らしい織りの茶色のハンカチをくるくると巻いて仕立てた1輪のバラの花がしっかりと介添えになっていました。私はその花束を頂いた時、アッとおもいました。なんと素晴らしい発想だろうかと。

娘がこんなことを話していました。「ライブのとき、大きな花束を頂くのはとても嬉しくありがたい。ただ正直大きな楽器を持つので、ちょっと困ることもあるのよ。折角のお花も散ったりするし、始末も大変だし。そんなことを考えてきっとこんな花束にしたのでしょう。ほんとうにさすがだなあ。」

それから私たちは、それにしても、今迄造花というものにあまり注意を払わなかったけれど、この造花の素晴らしいこと。いつのまにこんなに技術が成長したのだろう。本物より本物らしいかしら。今年の夏の暑さでお花には大分閉口したけれど、これなら十分。季節の花をとりいれてお仏壇に沢山飾ってあげよう。と相談しました。早速数種類の造花で仏壇が飾られました。

さて私はこの新しい住まいで、4つの窓から眺めるそれぞれの景色に、心を奪われて多くの時間を過ごすのが何よりの幸せと感じるようになりました。そんな中、仏壇に上げた造花の花々にも思わず目がとまり話しかけたりします。ある時、ふと朝は燦燦とした朝日を浴びてみな上を向いて元気一杯な花たちが、夕方になると少しずつ頭を下げているように感じたのです。特に先だって頂いた花束にははっきりとそう思いました。まさかそんなはずはないと思いながら、でも今はそれくらいの工夫はされていてもおかしくはないかも。そんな考えも頭をよぎります。娘にそう言ってみると、「まさか」と嶮もほろろ。でも気がついたでしょうかと喜んでくれる造花屋さんもいらっしゃるかも。

2024年10月14日