2023/08/03 11:09

そのように未解決の部分を抱えた私なりの一応の締めくくりでした。そして何の報告もなく黒田前日銀総裁は退官してしまわれました。

 しかしあるとき私は考えました。この問題はそんなにややこしいことなのだろうか。私にとって未解決の部分、つまり政府が日銀から借金をしたり、国債を引き受けてもらうのは、負債として処理すべきなのか? もし負債ならば貸主は誰だろう? と悩んだ部分は既に会計編ではなく、財政編ではないだろうか。政府の会計が企業や家計のそれとは徹底的に違うと言われる点でないか。いわゆる政府の財源作りのことではないかと。それを混同するからややこしくしているのではないかと。


以前、私も大変興味があって2度読んだ『財政赤字の神話』というMMTの現代貨幣論の日本版序文にはこうあります。「日本は景気後退にはいり、しかも、既に先進国で最も多くの借金を抱えているのに、政府はどうやってそれだけの支出を賄うのかと思うかもしれない。莫大な資金はどこから出てくるのかと。……それは日本政府の銀行、つまり日銀が貨幣を創造するというのがその答えだ。日本にそれが可能なのは日本に高い通貨主権があるからだ」と。たしかに日本は確たる理論構成もなく、MMTのいいとこ捕りをして採用したようです。当時の安倍首相は「日銀が政府の要望に応じていくらでも国債を引き受けてくれる。日銀券の印刷をするにはほんのわずかの金しかかからない。財源は無限である。財源のことは考えずに、政策を立ててほしい」と公言されていました。

森永卓郎氏の『ザイム真理教』が出版され、財務省との間で火花が散っているようにみうけられます。森永氏はMMTの系統なのでしょうか。今回の著書『ザイム真理教』の中にも「新たに通貨を発行すると発行者が利益を得る」という『通貨発行益』という巨大財産

を政府は持っていると述べてあります。負債という立場はとっておられません。財源は無限論のようです。

それに対して財務省から公表された、2020年末の「連結財務諸表」(前回のブログに登載しました)から見る限り、負債の部に国債として計上されています。財務省の財源論は税金であって歳入歳出均衡論のようです。一つの現実に二つの答えが対極にあって、日本は混乱に喘いでいるように見受けられます。

 

MMTという新貨幣理論は世界を席券しているようですが、実際に採用している国があるのでしょうか。その中で日本は現実に部分的にでも実行している最初の国、MMTにとってはたった一つの対象国としてその結果を今世界にさらしています。大実験の結果を、世界の国も、MMT提唱者自身も、固唾をのんで見守っているように私には思えてなりません。今こそ政策に一歩も誤ることは許されません。

 

植田日銀総裁の息詰まるような会見に対して、無関係の顔ではなく、せめてこの複雑な危機を乗り越えようとする岸田政権の覚悟の言葉をお聞きしたいと心から願うものです。

やはりきちんとした財政国家であってほしいと願います。たとえ100年計画であっても。

安易にAIに次の活路を求めてのめりこむことばかりではなく。

20230803