2023/02/21 12:25

天使のように

 真っ青な空に明るい陽射しが輝いて、春の訪れが嬉しく感じられます。美容室帰りとなれば気持ちまでもいそいそと。歩きながらふと前をみると、二歳くらいかしら、黒いジャンバーと黒いタイツを着た幼児が、お母さんに手をひかれてよちよちと歩いています。その様子がとても愛らしく、思わず急ぎ足になって追いついてみました。坊やか、お嬢ちゃんかわからないけれど、ニコニコと笑うその可愛さは、正直、はじめてみるようなたまらないものでした。

ちょうど駅前交番に立って外を眺めていた中年の巡査さんが、その子が前を通りかかると、さっと近寄って腰をかがめてあやしてでもいるようでしたが、幼児がコロンと転ぶと抱き上げ、たかい、たかい、をしてあげながら、明るい笑声をたてていました。数分でしたが、まるでその子に自然に引きつけられたような場面でした。私が「なんて可愛い子どもさんでしょう」と言うと、巡査さんは我に返ったようにはじめて私の方をみて「そうですな」と言いながら幼児を下ろしていました。

そのまま幼児はお母さんに手をひかれで歩きだしました。たまたま向かいのスーパーのドアを押して出てきた小さい一団の人たちは、幼児の歩いて来るのをみて、何だか一様に口元が綻んだ様子でした。たったそれだけのことでしたが、素敵な雰囲気でした。幼児は心なしか、何度も何度も私の方をみて笑顔で去っていきました。私は幼な子の無心な笑顔に、これ程心を奪われたことは今までありません。『まるで天使のようだった』と思いました。あの巡査さんもたまたまスーパーから出てあの子を見た人達も、もしかしたらそうだったのではないでしょうか。

私は日頃の鬱積した思いも飛び散り、外に出ればこんな小さい幸せとの出会いもあるのだと暖かい春の日差しに感謝しました。

 

複式簿記会計の仕訳というものを通して、私は『借方だけでは成り立たない』『貸方だけでは成り立たない』という真実を発見しました。その後ずっと自分の座右の銘としてきました。そのことはこのブログにも何回か書いたようにおもいます。今日久しぶりにそのことを思い出しました。

今世界中の人たちが理不尽ななにものかに苦しんでいます。そして出口を見出そうともがいています。

私は『借方だけでは成り立たない』『貸方だけでは成り立たない』という様相がみえているように思えてなりません。私にはどうする力もありませんが、『天使の笑顔』一つの解があるように、世界の良識が目覚め、踏みとどまってくれることを希望を持って信じようと思います。信じて、願って、祈ってやみません。

20230221日  川口 翠