2023/02/01 21:30
国会観戦感想記2
午後テレビの国会中継を観ました。今日は衆議院の予算委員会の審議でした。総理大臣の答弁は相変わらずペーパー読みですが、なぜ総理大臣がたつた一人で、すべての質問に対応するのか、不思議だなあと思います。朝から夕方まで、さぞかしお疲れのことでしょう。それにしても大臣任命の時はいつも『適材適所』と胸を張られるのに。ならば大臣たちは少なくとも、今日自分がなすべき答弁に対しての自分なりの覚悟もお持ちの筈。自分の意志で堂々と答弁されたらどうなのでしょうか。昔はよく、総理大臣は『以下は担当大臣に答弁させます。』と譲ったものでした。総理大臣一人で悪戦苦闘する場面からは、国会の威厳はみられません。また担当大臣の存在も希薄になって、花の舞台を失った担当大臣たちはさぞがっかりではないでしょうか。
もう一つの感想は、安倍政権の時代は、『財源はどうする』という発言は与野党ともに殆んど聞かれなかったけれど、この頃急に、『財源』という言葉が躍るように感じます。そのことについて私は少し書かせて頂きたいのですが。
安倍政権時代、私は国会の質問などで『財源』について言及する議員が与野党どなたもおらず、一体どうなっているのだろう、議員たちはどう考えているのだろう、何とかなると思っているのだろうか、それとも経済の基礎になる会計のことが全然わからなくて、発言できないのだろうか、と何度ブログに書いたことでしょう。そのうちにあまり不思議なので「やはり何もわかっていないからだろう」と一人決め込んでいました。当時は『経理や会計の借方貸方や勘定科目など何も知らなくても大丈夫』というキャッチフレーズの会計ソフトも人気のようでしたし。しかしそれは危険だと思い直し、『桐』というリレーショナルデータベースを駆使し、中小法人の会計ソフトと、個人事業者の会計ソフトをあらためて開発しました。マニュアルのすべてはブログで公開し、少なくとも会計の基本だけは、理解してほしいとの願いと祈りでした。そんな中、世にMMTという新貨幣論なるものが登場し、世界を揺るがし、特にそのモデルにされた日本の政界や経済界もきっと大分揺れたことでしょう。私はMMTの推進者であるステファニー・ケルトンという女性経済学者の方の『財政赤字の神話』という著書を注意深く読み掘っています。そして最後に自分の感じた結論をブログでご報告しようと思っていました。日本版の序文には、日本政府は主権通貨(円)の発行者であるため、必要な資金は日銀が製造する。無尽蔵である。資金が枯渇することはあり得ない。と書いてあります。けれど安倍元首相亡き後の今国会をみて、今、途中だけれど、自分の感想をここに書いておきたいと強く考えるようになりました。
本書は私にとって中々手ごわい。全く違った次元から言われていることの中にも参考になる部分はたしかにあります。膨大な理論の中に、たったチラリとでも、日本への危険信号になるところを掴みだすのは容易ではありません。でも私が今のところ直感しているのは、MMTがインフレーションに対して持つ警戒感です。日本版序文には、本当の制約という1項をわざわざ設けて、『……インフレーションは重大な脅威だ』と述べている部分もあります。資金が枯渇することはあり得ない。と言い切っている反面、異常なインフレーションだけは例外だと言っているように受け取れます。その異常なインフレーションに我が国はいま陥っているのではないかと思うのです。
テレビのニュースなどを注意深くみていると、インフレーションの原因を、コロナ禍や、ウクライナ問題でと、世界と同じレベルでさっと語っているようですが、私は日本独特の理由がもう一つ厳然として存在していると思います。それはきっと莫大な負債が、第3の原因となっているのではないでしょうか。私が心配するのは、国会が、アベノミクスの反省も、今後の覚悟も、何もなくて、今更『財源、財源』と騒いだとて、どうなるかということです。今後は今までのように、政府が必要だといえば、下請け会社だという日銀が、さっとお金を用意してくれた、そんなわけには、いかなくなるのではないでしょうか。本当に財政が不足になったらどうするのか、そんな議論があって初めて、増税とか、税制改正とか、歳出改革とか、あらゆる検討がなされるべきではないのでしょうか。そういう気配が一切ない国会に不安が募るのです。無責任ではないかと思うのです。どうかもう少し根本的な現実の論戦をしていただけないでしょうか。一度超インフレになったら、人はますます消費を控え景気回復は遠くなるでしょう。MMTもそれを怖れ、過剰ともいえる反応をしめしているのではないでしょうか。国民もみていますから。御願い致します。2023年02月01日 川口 翠