2023/01/30 12:24

 2023124日の朝日新聞に、憲法学者の方が、新たなる政治の空騒ぎという題で、又『「安倍一強」から10年 9条言及欠いたまま戦後安保政策の転換』という副題で、寄稿されていました。私は強く感銘をうけました。抜粋させて頂きます。

先ず202278日安倍前首相が横死されたことについて。凶行を正当化しうる一片の理由もない。ただ被告人は自らの上に降りかかった不遇が、政治の動きと無関係でないことを嗅ぎつけていた。教団の信者とその家族にとっては、個人的なことが、同時に政治的なことであった。教団との関係の弁明に追われた政治家たちについて。政治家たちの主張は、版で押したようなものであった。「選挙だから支援者を多く集めることは必要なことだと思っている」「次の選挙でどうなるかは軽々にお答えできない」「ボランティアで御手伝いを頂いたケースはあると思う」「正直言う。何が問題なのかよくわからない」これらの政治家の主張は、選挙至上主義であり、政治の為ならば大抵のことは許されるという感覚であり、つまるところ想像力の欠如である。かくも劣化した政治の現状について。戦後の日本政治において、ここまであけすけな国民軽視を、政権与党の有力政治家がこぞって示したことがあっただろうか。かくも無残な政治の劣化は、「安倍一強」と言われた政治環境に胡坐をかいて、10年間、衆参6度にわたる国政選挙での勝利に酔った安倍氏「配下」の政治家たちが、我慢強い国民に高を括って、空騒ぎに興じた結果というよりほかに説明のしようがない。 現憲法との関係について。20221216日の安全保障戦略の閣議決定は、憲法9条への言及を欠く。相手国内の軍事施設を攻撃することが、「武力の行使」の必要最低限性を厳しく求める憲法91項に違反しないか、また抑止力を至上課題とし、軍事衝突のリスクを高め、際限なき軍拡競争を必然化する国家戦略が、「戦力不保持」を求めた憲法91項に違反しないかは、通常国会の不可欠の争点である。だがそれ以前に、このような「戦後の安全保証の政策の大転換」を岸田文雄首相が憲法9条に即した説明をしないまま、国会審議を待たずに、それどころか、臨時国会閉会後を待って閣議決定をしたこと、それ自体が最大の争点でなければならない。この10年間を経過した後の20231月の日本はどうか。 旧統一教会と、とりわけ自民党・現最大派閥(安倍派)との関係を自己点検しようとする政治の動きは、すっかり沙汰やみになったかにみえる。この国の首相は「戦争放棄」を定めた憲法9条との関係には言及することがない一方、「経戦能力」という言葉を当然のように使った。空騒ぎの神輿(みこし)に担がれ続けた元首相が横死してもなお、この国の政治は、けじめをつけるどころか、新たな亡国の遊戯を始めようとしているかのようである。

この国には悲劇がどれだけ必要なのか。(以上要所抜粋 川口)

**************************************

国会観戦感想記

 そして私はテレビの国会中継を観ました。たまたま参議院の代表質問のようでした。先ず思ったのは、質問も総理大臣の回答も、すべて文書の朗読だけでした。こんな長い文章の原稿は一体誰が作成するのだろうか、まさか官僚の徹夜の作業によるものではないだろうけれど………。それにしても国会議員全員に配布するなら、原稿の用紙代も随分かかるだろうに。そんなことばかりが見えて、感動すること、納得すること、希望が湧くこと、そんな実感は一切なく、失望の極みでした。論戦とはあんなものなのでしょうか。質問も解答も、核心部分や、要所要所だけをメモしておけば、自分の考えなのでしょうから、壇上では自分の言葉で訴えてほしいものです。再質問もないし……。再回答もない……。一体どうなっているのかしら。

 たとえば立憲民主党の質問者が安全保障問題について「憲法に違反しないか」という質問をしたと思いました。私は「ここが大事だ」と心を引き締めてみていたけれど、首相の「もちろん憲法の枠内ですから」というたったその一言で片づけられて終わってしまいました。これでは、首相の提唱する軍事費増額の問題、更にもっと危ない戦争推進ともとれる大きな問題は、国会で是認されたような印象を与えるのではないでしょうかこんな軽々しい国会論戦では怖くてたまりません。代表質問だから一党一人しか質問に立てないのでしょうか。あれもこれもとテーマを広がりすぎ、印象が薄れます。せめて何人かで分担し、本当に自分が質問をしたいことに的を絞ってもっと議論を深めていただきたい。150日もありますから。

原稿の朗読会で終わることのないように切にお願いします。長い間の国会慣習でしょうが、そろそろ国会改革にも取り組んで頂きたいものです。

2023年01月29日  川口 翠