窓を開いて

　朝ごはんはほんのおなかを抑える気分で、とても簡単です。パンにたっぷりのバターをつけ

コーヒーを熱く淹れるだけです。それにしても天然酵母のどっしりしたパンはおいしい。

さいたりむしったり気持ちのままに。いつも柔らかくしっとりしていて。トーストより気に入

ってしまいました。気がついたら包装袋にこんなことが印刷されていました。“カットするより

もさいていただいた方が食感がよくおいしく召し上がっていただけます”。やっぱりね。ほんと

にそうね。なんだか果物が欲しくなりました。頂き物の大きなリンゴがあった。スーパーに並

んでいるものの2倍もあるかしら。新聞紙に丁寧に包んであってその上にボーシまでかぶって。

生産者の方の思い入れの深さがこころに届きます。四分の1だけ包丁で切って頂くと、とても

しっかりした感じだけど甘い。ああおいしい。食卓のムードもなく、とてもさっぱりしたもの

だけど、これが私の探しているものかしらとも思えて。

食べたいとき、食べたいものを、食べ過ぎないように。自分の気持ちのままに。小さいこと

だけど、うれしい気持ちに包まれます。

　

日本の財政のことは前にも増して心配でなりません。国会議員さんたちの核心に触れ得ない

問答には苛立ちと諦めも感じます。だけど失望してしまっただけではどうにもならない。

いっそこんな小さな暮らしから、大きい自然や、大きな世界でもみて楽しむこともいいのでは

ないかと思うようになりました。

もしも老齢者たちの話題が、病気や介護や、孤独ではなく、自然や、世界の街並みの楽しさ、

ファッションや、小説や、そんなことになっていったならば、とてもうれしいことだとそぞろ

に思ってしまいます。

2022年11月29日　　川口　翠