2022/10/24 00:34

会計担当者

私が前稿の製材会社に入社したとき、たまたま会計担当者の女性が退職したので、その

後任になりました。それこそ会計については右も左もわからない素人でしたので、仕事

を終えたあと、夜間の簿記塾に通いました。毎日の仕事として伝票をきることと、帳簿

に記入することだけは、前任の女性から退職の引継ぎとして教えて貰ったので、意味は

わからないながら機械的に処理していました。夜、簿記塾で[借方][貸方]を習う時、

昼間の自分の仕事を思い出しながら一生懸命に勉強したものでした。全くの素人だった

ことはむしろ幸いだったのでしょう。学びと実践の両面作戦は最高に効果的だったよう

でした。当時は会計の仕事はすべてソロバンと手書き。一か月の試算表が1回でピタリ

と合った時は、両手をあげて事務所中に轟くような万歳をしたものです。

 

やがて総勘定元帳に記帳し試算表を作成し社長に提出したとき、社長から決算報告書

を作ってみなさいと命じられました。当時、会社は公認会計士とか税理士とかに毎月

依頼するのではなく、会社で決算報告書の下書き迄を作り、公認会計士事務所に持参

して、面談しながら正式な報告書を作成して頂く契約をしていました。入社一年の私

は必死でした。決算書の下書き作りは夜遅く迄バラック建ての事務所で、ブンブン

蚊に刺されながらやりました。たった一人で、バスに乗って1時間もかかる公認会

計士事務所も訪ねました。そこで質問応答や、決算手続きをしっかり観察したので

とても勉強にはなりましたが。それが私の会計という仕事の原点になりました。

 

最近の会計ソフトはとても便利になっているとおもいます。『勘定科目など知ら

なくても入力だけですべて完了する』などというキャッチフレーズの会計ソフト

ともなれば、私が上の説明のように経験した、手書き、そろばん、そんな段階は、

みなカットされている筈です。『どうして複式簿記を勉強している人が、勘定科

目や〖借方貸方』が出てくるあたりで、たじろいで放棄してしまった』という声

が多いのだろうかという疑問が、私には最近ようやく解けたたように思います。

あそこが会計処理の出発点なのに、カットして便利にされてしまったのですね。

素通りしてしまったのでイメージとして掴みにくかったのでしょう。

2022年10月24日  川口 翠